伊豆諸島は火山島である。大島には三原山があり、利島に宮塚山、新島にも宮塚山、式根島には99ｍのカンビキ山、神津島にはこの天上山、三宅島と御蔵島には御山、八丈島には西山の八丈富士と東山の三原山がある。通常、伊豆七島と言われるものには、この中で一番狭い式根島は除かれているようである。町村としても式根島は新島と共に新島村になっている。更に外洋に向かうと、父島や母島などのある小笠原諸島があるのは周知の通りである。

山と渓谷社が発行している各地域の百名山本の中に「関東百名山」がある。北海道・東北・関東・甲信越・関西・九州のシリーズは見たことがあるが、この他の地域の本は目にしたことがない。中国と四国は刊行されたらしいが、東海・北陸はどうなのだろうか？

この関東百名山シリーズで、伊豆諸島から唯一選ばれているのが、この天上山になり、奇しくも私にとっての百山目の山になってしまった。

17日22時に竹芝桟橋を出航した「かめりあ丸」。18日3時過ぎ、浦賀水道を航行中、直近で12630ｔのバナマ船籍と7406ｔの韓国船籍という大型貨物船同士の衝突事故があったという。この事故でパナマ籍の船が沈没した。直近にいた我等が乗っていた船は緊急停船し、救助活動に参加し、乗員20名の内、4名を救助した。「医師や看護師はいませんか？」との船内放送で目が覚めた。その後到着した巡視船など？に捜索活動などを移管し、大島で元気だったその4人を下船させた。19日夜現在、1名死亡、8名が行方不明になっている。

そんなこんなで神津島に到着したのは2時間以上遅れ、18日12時を大きく回っていた。

関東では「春一番」が吹いたというこの日、神津島に到着したのは通常の神津島港ではなく、民家の全くない多幸湾の「三浦漁港」であった。多くの島では、風向きにより、複数の港を用意している。

下船後にすぐ民宿の車で黒島登山口に入った。前後してツアー登山のガイド1名と、客6名の団体がいる。竹芝から一緒だったパーティである。彼等に先行して出発した。登山口の標高は190ｍほどである。ここから470ｍ程度の山頂台地までは西に面した急斜面のジグザグ道であるが、良く整備された道で、ほぼ高度30ｍごとに合目標識やベンチが設置されている。

左手上方には、山頂部から削ぎ落ちる神津沢の崩落を、下方には神津島港を見下ろしながら、ゆっくりと登って行くと、10合目に到着した。山頂台地の一角である。

地元の一人が下山してきた。国立公園の管理などをしている人らしく、「この上は風が強く、雨になりそうなので、止めたほうが良い」とのこと。「気を付けます」と言って別れた。この火山台地には多くの噴火痕がある。「続日本後記」には承和7年（840年）に噴火の記録が残っているという。

すでに完全な曇天になってしまったが、表砂漠の手前の岩陰で遅い昼食にした。結構、気温は下がっている。風も強くなってきたので、表砂漠からは直接山頂を目指した。標識の表示は「最高点」となっている。火山灰と溶岩の道を登ると、神津沢側が開ける「白島口」の分岐になる。ここから山頂まではわずかであるが、一段の暴風状態。小さな砂粒が顔を叩き、ほうほうの体で山頂に飛び出した。意外にも風は弱い。四周に見えるはずの海はわずかに霞み、青い海には見えない。

下山は分岐に戻り、白島を目指すが、小さな尾根を越す「工事場」付近も暴風状態である。台地の縁に近い不入ヶ沢を通り、白島ヶ山口になる。ここからは西側急斜面のジグザグの道である。正面からの風をまともに受けながら下ると、しばらくで灌木帯の窪のような道になり、風も頭の上を通り抜け、6合目の白島登山口に降り立った。

ここまでは車道がきているが、村落までは大・大回りになるようだ。登山道はトイレの手前から更に続き、南国らしい常緑樹の尾根を抜け、ロープの断続する急坂を下ると那智堂になり、小さな鞍部からは左に沢地形を下ると狭いコンクリ車道に出た。緩く下ると長浜に通じる「神津本道」、今宵の民宿はもう遠くはないだろう・・・・・・。


　○　2014年3月18日　　○　天候　晴れ→曇り（風強し）

黒島登山口12.31五合目12.56〜59八合目13.15〜19十合目13.28〜30表砂漠手前13.43〜52天上山14.11〜17白島下降点14.27白島登山口14.43〜55那智堂15.06〜07車道15.20民宿15.42


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