下駒ケ岳

猛暑の夏の８月末、低い標高のこの山という懸念をもちながらも、「そうは言っても北アルプスの末裔だろう」とこの山を16座目の駒ケ岳行として計画をした。

長大な栂海新道を完歩せずとも、日帰りで往復が可能な道があるという。

前日、北陸道の蓮台寺ＰＡで車泊し、上路集落から先に車を乗り入れた。611ｍの坂田峠のわずか下に「白鳥山駐車場」と書かれたスペースがあるが、道は尚も続き、右折するとすぐに広い駐車場があり、約2キロで林道終点の駐車場になる。山姥の洞の案内図があり、ここの標高は760ｍという。

案内図によると、山姥の洞の標高は900ｍとある。地形図ではどう見ても800ｍ程度、この林道の推定位置からもどうも場所が違うようだ。洞は何ヶ所かあったのかも知れない。

案内に従って歩き出すと、のっけから急な階段が続き、20分で洞穴になる。

急坂を下りだすと相次いで下山してくる3パーティとすれ違った。荷物からして栂海新道を完歩する人達だろう。うらやましい限りだ。

最低鞍部から1210ｍの前衛峰に上がる。樹間からは山頂南面から崩れ落ちる大ガレが見え、一旦その縁を辿って登り返すと木々に覆われた山頂であった。わずかに見える大きな山は犬ケ岳であろうか。

暑過ぎるのか、水を飲み過ぎたのか、汗は下山になっても止まらず、白鳥山への登り返しはつらいものになり、水溜まりではタオルを濡らし、鼓滝の小沢では大休止をして水をガブ呑みしての下山になってしまった。

　○　2010年8月28日　　　○　メンバー　単独

760ｍ登山口6：26山姥の洞6：46滝上の小沢7：05～21鳥居杉7：36栂海新道7：49
白鳥山8：02～20鞍部8：44下駒ケ岳9：15～50鞍部10：11白鳥山10：49～11：07分岐11：16
鳥居杉11：24～33小沢11：45～12：13山姥の洞12：28駐車場12：42

時間は未だ早く、糸魚川にある「フォッサマグナ　ミュージアム」に立ち寄った。立派な館内には、場所柄か、大きな翡翠の原石や、数多くのアンモナイトの化石などがあり、こうした博物館ではめずらしく、多くの見学者が訪れていた。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

栂海新道の中央より北側、より海に近い方に位置している。下駒ケ岳があるのなら、上駒ケ岳もあるのだろうか。親不知の海岸から地形図でこの長大な尾根を辿ると、入道山・尻高山・白鳥山・下駒ケ岳・犬ケ岳・長栂山・朝日岳・赤男山・雪倉岳・鉢ケ岳・そして白馬岳となる。その他に菊石山など、地形図に名のない山もあるが、上駒ケ岳は見当たらない。

しかし、かつて江戸時代からこの連峰の白鳥山・下駒ケ岳・犬ケ岳を総称して下駒ケ岳三山とも呼んでいた事もあるという。今では無名なこの下駒ケ岳の名は由緒正しいもののようだ。しからば、上駒ケ岳は？？こうして山名を並べ、由緒を質していくと、その名称からして、上駒ケ岳は代馬、すなわち白馬岳でしかなくなるだろう。上駒である白馬岳に対し、下駒の下駒ケ岳。下駒の雪形は果たしてどんなものであるのだろうか。

フォッサマグナの糸魚川―静岡構造線は現在では北アメリカプレートの西端が日本海東部から南下した延長上にあるというのが定説になり、事実ここでの解説でもそのようになってはいるが、その成因としては、大陸の東端が「盛り上がり」その歪で大きな崩壊と小さな崩壊が発生し、大きな崩壊は徐々に広がって日本海になり、小さな崩壊がこのフォッサマグナになったとしている。北アメリカプレートが日本海に接近したのはその2000万年も後であるとしていた。

その小さな崩壊した場所に新しい地層がプレート移動に伴って付加され、9000ｍにもわたって堆積したのが、フォッサマグナであるとしている。これではブレートの移動と小さな崩壊がどちらが先なのかわからず、付加原体のプレートが、太平洋プレートか、フィリッピンプレートか、はたまた北アメリカプレートなのか明らかではない。

現在の地形や相互の位置からして、「伊豆半島を乗せて移動してきたフィリッピンプレートの沈み込みにより、この地域を引きずり込み、崩壊が起き、ひいては日本海の海底をも引っ張り込んだ」というのは素人の浅知恵だろうか。しかし、得てして真実はそのような「ひらめき」から明らかにされる事が多いのである。

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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　次の山へ　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

ここからやや尾根っぽい道になるが、やがて右手に沢音がし、沢が間近に見えるものの数度の急登の屈曲の末、7～8ｍの滝の落ち口を跨いだ。この滝が鼓滝なのだろうか。

喉を潤し、緩い斜面を登ると鳥居杉、そのすぐ先にも、タオルを浸す程度のごく小さな流れがあり、笹の中の緩い尾根になると間もなく栂海新道の縦走路に出た。今までと違う広い切り開きの尾根を辿ると、白鳥山の山頂、立派な山小屋が出迎えてくれた。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　